海のいろ

尾野会厘(句歴2年目)。天草(熊本)の俳句を作っています。「鷹」会員、「奎」同人。詩吟と漢詩はかれこれ20年以上

【20/150句】句集『一番線』涼野海音

一番線―句集

 発行:2014年7月、文學の森

句数:150句

著者:涼野海音(1981-)(「晨」同人、俳人協会会員)。

 

装丁:宿南勇。海と空と題字の青色のグラデーションが爽やか。

序文:増田千恵子

備考:本著は第4回北斗賞受賞によるもの。著者の第一句集。

だいぶ前に読了したが、再読。

以下20句抄出。

 

春の雪キリンに長きまつげあり

桃の日の湯のあふれゐる洗面器

卒業の日の噴水の高さかな

鷲づかみしたる虚子忌の花鰹

眉かかれたる犬と春惜しみけり

駄菓子屋に空き瓶ひとつ麦の秋

あめんぼの水輪に富士の遠からず

六月の風つかみたる赤子の手

穴子喰ふ顔を見られてしまひけり

海の日の一番線に待ちゐたる

峰雲や胸の高さで名刺受く

屋島より雲伸びてゐる盆休

日向ぼこテニスボールの転がり来

水平に母湯たんぽを運び来る

機関庫の奥に日の差す十二月

煤逃のわれと目が合ふ手長猿

大年や吊革海の方へ揺れ

読初のメロスまだまだ走りをり

畳まるる成人の日のパイプ椅子

寒卵海光さしてゐるごとし