海のいろ

尾野会厘(句歴2年目)。天草(熊本)の俳句を作っています。「鷹」会員、「奎」同人。詩吟と漢詩はかれこれ20年以上

【20/305句】詩集(句集)『魂の一行詩 晩夏のカクテル』角川春樹

晩夏のカクテル (日本一行詩叢書)

 発行:2007年10月、日本一行詩協会。
句数:305句(I 95句、II 45句、Ⅲ 75句、Ⅳ 90句)
著者:角川春樹(1942-)(「河」主宰、俳人協会顧問)。
装幀:浅沼剛九。表紙は、ウクライナ生まれでアメリカの天才ピアノ奏者ウラジーミル・ホロヴィッツ(1903-1989、グラミー賞計25回(!)受賞など多くの受賞歴あり)の両手の写真。
備考:本著は詩集としての出版。
以下20句抄出。

 

Ⅰ 五月の鷹

虚子の日の落花の中を帰りけり

便所より男吐きだす朧かな

くづれゆく牡丹が夜を濃くしたり

人ごゑの道に出てゐる夜の新樹

リラ冷の紅茶をくぐる銀の匙

避妊具を少女が買つて麦の秋

 

Ⅱ 巴里祭

巴里祭や紅茶に溶けぬ角砂糖

鮎焼くや枕詞のやうな雨

きらら虫父は荒野に暮れてゆく

 

Ⅲ 晩夏のカクテル

地下BARの晩夏の扉ひらきけり

老いの手のサルトルがゐる処暑の卓

かなかなや少しづつ減る母のもの

コインロッカーに夜が来てゐる終戦

晩夏かな指にのこりし檸檬の香

 

Ⅳ 九月の椅子

秋風のポール・ニザンは二十歳かな

跳ぶためのイルカの空の澄みにけり

今年米ピカソの顔で食ひにけり

百円のライターともす秋の海

秋高し赤衣の僧が群れてゐる

黄落のまつただ中に父がゐる