海のいろ

尾野会厘(句歴2年目)。天草(熊本)の俳句を作っています。「鷹」会員、「奎」同人。詩吟と漢詩はかれこれ20年以上

【20/340句】句集『旧の渚』小池康生

句集 旧の渚

発行:2012年4月、ふらんす堂

句数:340句(旧の渚86句、風の尖78句、新の渚88句、風の骨88句)
著者:小池康生(1956-)(「銀化」第一同人、「奎」代表、俳人協会会員)。

装丁:中原道夫(二面性をあらわすかのような二色のシンメトリー。背表紙はシルバーの題字。理知的な印象を受ける。)
序文:中原道夫

跋文:櫂未知子
備考:本著は著者の第一句集。
以下20句抄出。

 

旧(きゅう)の渚

家族とは濡れし水着の一緒くた

噴水や風に乗るこゑ乗らぬ声

数へ日の換気扇より空の音

えんぴつ一本どれだけの蝶描けるか

潮干狩どこを選べど沖のあり

 

風の尖(さき)

煮凝や昏がり多き家に住み

凍星にうどん激しく啜りをり

水仙に途切れとぎれの風の尖

ひとひらに影と日のあるさくらかな

餃子包む流星よりも速やかに

 

新(さら)の渚

ぼうたんの手前に風の止まりをり

香水やかつて中学二年生

帰り来てすぐまた泳ぎたくなりぬ

ジャンパーにひとり暮らしの沁み込めり

ひとの子となりし女優や吸入器

 

風の骨

たんぽぽとたんぽぽの間に茣蓙を敷く

舟虫や用なきものの集ふ浜

三日月や給油レバーは銃に似て

冬帽の置いてあるかに落ちてゐる

風呂吹のなかの炎にゆきあたる