【20/422句】句集『鶯』長谷川櫂
発行:2011年5月、角川書店。
句数:422句(一 45句、二 49句、三 49句、四 48句、五 47句、六 47句、七 44句、八 47句、九 46句)
著者:長谷川櫂(1954-)(「古志」前主宰、朝日俳壇選者、「きごさい」代表)。
装丁:巖谷純介。表紙は唐宋八大家のひとり、蘇東坡(蘇軾とも、北宋1037-1101)の漢詩をモチーフにしている。
備考:本著は著者の第十句集。巻末に季語の索引が付いている。
以下20句抄出。
一
願はくは花びら餅のやうな福
永き日とすれちがひたる堤かな
ニ
わが思ふところにのぼるけふの月
舞茸や月の光のしたたれる
三
火一つ埋めたること忘れけり
白山の氷やとけて生一本
四
鎌倉は竹あをあをと明け急ぐ
昼寝覚天より落ちてきしごとく
五
日蝕の木洩れ日を浴び端居かな
若冲の画より転がりきて柘榴
六
人間に管を接ぎ足す寒さかな
喜びも悲しみもみな雑炊に
七
日向より戻れば春の望の月
一片のまみどりの葉を日向夏
けふもまたさみだれてゐる机かな
八
短夜の君のいびきも俳句かな
日天心片陰さへもなかりけり
マウンドを降りればただの日焼の子
九
一杯のコップの水の秋うらら
荒海のごとくに煮ゆるおでんかな