【20/242句】句集『翌朝回路』宮崎斗士
発行:2005年12月、六花書店。
句数:242句(春50句、夏82句、秋40句、冬52句、また春18句)
著者:宮崎斗士(1962-)(「青山俳句工場05」発行人、現代俳句協会研修部長)。
装幀:真田幸治。生クリーム色のベースに1本の鍵が真横に。シンプルなデザインが、細やかな凹凸の紙質を活かしている。写真よりも実物は白い。
栞 :谷佳紀、白井健介、守谷茂保、芹沢愛子
備考:本著は著者の第一句集。
以下20句抄出。
春
家族みな仰向けになる弥生かな
ライラックの香りは四百字ぴったり
八回の表のごとく韮を買う
僕の病室の匂い いいぞもっとやれ
夏
袖口に玉虫とまる孤独かな
蜜豆やあのころ画家になりたかった
ひきがえるの重さでタイムカード押す
青水無月石がいっぱい母がひとり
薬局のように水母の動くなり
ほうたるにすべての夜は漢詩なり
自己紹介白玉の浮き沈みして
秋
家中の引き出し開けて満月なり
終戦記念日関節ひとつずつ朝だ
猪あるいは打楽器でいっぱいの闇
冬
回遊魚の静けさありぬ求婚は
ポインセチア見知らぬ人とする影踏み
ホッチキス例年通りの聖夜です
冬晴れはあの日あなたが着ていた服
また春
ぶらんここきすぎて畳屋のようなり
桜の夜秒読みみたいに立っている