【20/302句】句集『ログインパスワード』折勝家鴨
発行:2017年4月、ふらんす堂。
句数:302句(第一章50句、第二章86句、第三章78句、第四章88句)
著者:折勝家鴨(1962-)(「鷹」同人、俳人協会会員)。
装釘:和兎。表紙と外箱のシルバーと、見開きの真紅の対比が美しい。
序文:小川軽舟
跋文:加藤静夫
備考:本著は著者の第一句集。
以下20句抄出。
第一章 市松模様
桜咲く金を遣いに東京へ
兎の目夏手袋をはずしおり
原爆忌餌の小魚きらきらす
日が落ちて妻となりけり冬薔薇
誰よりも幸せ何も知らぬ蝶
第二章 大陸
圧倒的多数のひとり黒揚羽
夫と同じくらい幸せ鳳仙花
文学と余りご飯と虫の声
鍋磨く女の自由木の実落つ
働く日数えてしだれざくらかな
第三章 ラブホテル
露の世や畑のなかのラブホテル
鳥籠を十月の風通りけり
梅白し死者のログインパスワード
クレソンを嚙みたる森のホテルかな
歯車の嚙み合っている暑さかな
第四章 多肉植物
会社員霧のごとくにぶつかり来
母のこと有耶無耶になる夜食かな
朝粥に沈ますれんげ五月雨
萩咲くや笑顔の母の近餓え(ちかがつえ)
湧くたびに水ひかりけり七五三