【20/676句】句集『営巣期』堀口星眠
発行:1976年10月、牧羊社。
句数:676句(S33年13句、S34年29句、S35年32句、S36年23句、S37年21句、S38年17句、S39年36句、S40年19句、S41年17句、S42年19句、S43年29句、S44年23句、S45年30句、S46年38句、S47年50句、S48年58句、S49年70句、S50年65句、S51年87句)
著者:堀口星眠(1923-2015)(「馬酔木」主宰を経て、「橡」創刊。俳人協会顧問。)
装幀:直木久蓉。外箱はベージュをベースに、巣を思わせる大きな菱形の中心に緑色の題字。本の表紙は真緑一色の布地に金字の背表紙。高原派と呼ばれた著者のごとく、自然を彷彿とさせる。
備考:本著は著者の第二句集。当著で第16回俳人協会賞受賞。
以下20句抄出。
昭和33年、34年、35年
芒焚くけむりひとすぢ百舌鳥遠し(昭和34年)
昭和36年、37年、38年
またひとつ吾が負ふ喪あり野火にじむ(昭和36年)
リラの香の朝餉来合はす修道女(昭和36年)
昭和39年、40年、41年
蓑虫がすてし蓑あり鞍馬石(昭和39年)
えぞにうに虫ひそみをり星祭(昭和40年)
昭和42年、43年、44年
霙うつわが少年の日の学舎(昭和42年)
永からぬ野菊日和に繭を干す(昭和43年)
昭和45年、46年
瞬ける失語の母や冬旱(昭和45年)
洋芹(クレソン)の水奏でをり春炬燵(昭和46年)
昭和47年
岳ばかり見て立つスキー怠けては
昭和48年
まどかなる鯛焼の眼よ月見ずや
野火ひとつ見えて五十路の誕生日
昭和49年
神留守の湖を満月わたるなり
リラ一日暮れぬまなうらむらさきに
昭和50年
きさらぎの子の眼浄らに筆供養
郭公や網戸に青き渦ならび
昭和51年
ふかぶかと眠る山みな無名なり
萌えてすぐ咲く醜草や咽喉痛き
懺悔室懺悔つもりて黴びにけり